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日々の生活の中で、ふと聞こえる心のつぶやき日記


by keiyou-ai
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白寿ホール 米良美一コンサート

 今日の白寿ホールでのコンサートは、とても刺激的なコンサートでした。これを見なかった方、本当に残念だったのではと思います。(すみません。かなり勝手な発言です。(^▽^;)
一部は、正統派クラシックの「詩人の恋」op.48。私には、甘くどことなく軽やかで失恋さえも楽しんでいるような…。そんな感じさえ致しました。訳詞がソフトなイメージだったからか、米良さんの歌もかなり声をシャープに絞り込みながら、肩の力を抜いた演奏だったように思いました。ちょっと物足りないくらいあっさりした?京和菓子のように上品で美しい「詩人の恋」でした…。2部、此処からが、米良さんの新境地というようなステージ。まずは三文オペラから「メキ・メッサートのモリタート」で軽いジャブ!曲の前に朗読が入り、芝居の語り風で場面が想像できるようになっています。ラメの入った地味なスモック風の衣裳で、男性役を演じ、次のサティ「エンパイア劇場の歌姫」では、何ともしたたかな歌姫、スモックの端をめくるように艶っぽい仕種で観客を魅了する妖艶な女性役を演じていました。(爆)オッフェンバック「ラ・ペリコール」から「酔っ払いの唄」、今迄はアンコール曲でしか歌われてなかったように思いますが、堂々と正式にプログラム入りです。(この唄を聴くと、思わず苦笑してしまいます。自分の身にも覚えがありますので…(爆)次は、ワイルの「マハゴニー」より「アラバマソング」と「ハッピーエンド」より「スラバヤ・ジョニー」。マハゴニーって砂漠の中にできたラスベガスみたいな幻の国のお話でしたッけ…?これは、ごめんなさい。もう一度聴かないと良く思い出せないです。今回は、予習が足りなくてワイル関係の本まだ途中迄だったので…。

今日のコンサートの中で、綺麗な曲だなと思ったのがカワード「カヴァルケード」より「20世紀のブルース」渾沌とした暗い川にも似たイメージのタイトルなのに、何となく甘く切ない曲調で、綺麗だなあと…。(この曲は、探してみよう。)
圧巻は、最後の曲「お定のモリタート」知る人ぞ知るという曲だと思いますが、演劇的な振りと表情、そして地声と裏声を表情豊かに変化させる米良さんは、まさにお定になりきっているという雰囲気…。最後に狂いながらも、純粋に愛したお定の唄は、どこか悲しく透きとおり、そして激しく波打つピアノの伴奏によって慄然とするような恐怖感さえ漂わせていました。伴奏の山田さん、こういう演劇的要素の強い曲がお得意なのかなと…。ぞくぞくする凄みさえ感じる素晴らしい演奏でした。

今日は、朗読あり照明あり、大道具小道具ありと、ミニオペラシアターのようで、米良さんのまさに新境地と言うステージです。ご本人様も、「今日の雪でいろんなものが浄化されたように感じ、新しい第一歩が踏み出せたように思います」という言葉通り、すっきりと吹っ切れたようなイメージでした…。
正統派クラシックには、もちろんそれなりの美しさがあるとは思いますが、私は、変わり行く現代の空気感を持った生きたクラシック音楽を聴いてみたいと思います。今の時代は、さまざまなものが崩壊を始め、大きく舵を切り始めているようにも思います。歌は世に連れといわれますが、クラシックのジャンルにおいても、この21世紀のカオスの中から産まれる新しい解釈や、演奏があって欲しいと思うのは邪道でしょうか?
そういう意味で、本日のプログラムは、聖も悪も渾沌とした都会の不夜城「新宿」「渋谷」「六本木」などの繁華街のイメージを連想させ、都会の渾沌とした渦の中から、聖邪を超え昇華しながら飛翔する「不死鳥」…のように、人間の根源的な聖性と邪悪な性、その両面を包含しつつ芸術性を持って昇華させていくという米良さんの姿勢を感じます。黒と赤の衣裳がそれを象徴的に表わしているようで、とても印象的なステージでした。

こういう意欲的なステージにチャレンジされる米良さん。これから、ますます聴いてみたくなりました。米良さん、山田さん、素晴らしいステージを本当にありがとうございました。
by keiyou-ai | 2005-03-05 01:25 | 鑑賞徒然